【コラム】心の情報処理と確証バイアス

(代表中里文子のコラム/2023.12.12)

シンクロニシティsynchronicity):意味のある偶然の一致」という言葉をご存じですか?これは,分析心理学者C.G.ユング(1875-1961)が提唱した概念で(ユングの造語),「共時性」「同時性」と訳され,単なる「偶然の一致」では簡単に片づけられない非現実的な意味深い現象をいいます。

シンクロニシティには以下の2つのパターンがあります。
① 「予知夢」や「正夢」など夢に見たことが現実に起きる(心の状態(夢や予感)が現実化すること)
② 祖母の夢を見た同じ時刻に祖母が亡くなった(離れた場所で起きていることが同時(刻)に自分の心と体にも起こること)

このような現象は「テレパシー」「気(波長)が合う」とされることもあり,「単なる偶然」だと非科学的な現象とされがちですが,ユングはこれらを「集合的無意識」などの概念から心理学的・科学的方法で究明しようと試みました。

ユングは、「人間の意識は深い部分でつながっており交流している」と考えました。この全人類がつながっている共通の無意識を「集合的無意識」といい、私たちは集合的無意識※からさまざまな影響を受けていると考えられています。

※例)世界中には数々の女神像や菩薩像が存在し,それが国別問わず微笑み方や容姿などが似通っています。ユングは、女神や菩薩像は「母性の象徴」とし、世界人類共通した人々の無意識下にあるイメージからくるとしました。

「何となく嫌な予感がした」など予兆のようなものを感じる場合は、集合的無意識からメッセージを 受け取っていると考えられています。そのため、場所が離れていても同じようなタイミングで同じようなことが起こる可能性があるのです。

また、敏感で感受性が高い人は特に不快なものに対するアンテナの感度が高くなるため、サイン(メッセージ)をキャッチしやすいといわれています。


例えば、温暖化等の異常気象に対して不安を感じているとすれば,「温暖化 影響 被害」のようなワードで検索をかけますね。すると不安をあおるような悪い情報が目に付くようになります。このように,悪いことを証明するような情報ばかりを集めようとする性質を「確証バイアス」と呼びます。

私たちは,すでに抱いている相手の印象や状況に応じてその情報を解釈しようとします。例えば,悪い印象を持っている人について,良い情報・悪い情報の双方の情報を得る機会があっても,良い情報はスルーして悪い情報のみ取り入れ,元の悪い印象を維持しようとします。コロナワクチンの副作用について不安を抱いていた時に,「コロナワクチン 副作用」で検索すれば,重い副反応や死亡例が目につきやすくなり,「ほら,コロナワクチンは危険だ!」と不安材料の悪い印象を維持してしまいがちです。

私たちの心は,自分に都合の良いように解釈をしようと働きます。「母親だからこうあるべき」という母性神話や,〇〇大学出身だから頭がいいなどのステレオタイプの人は,そうした心の動きによって間違った方向に突き進む危険性を秘めています。

情報が溢れ,瞬時に多くの情報を手に入れることができる現代社会において,常に私たちは「確証バイアス」を軽減させることを意識する必要があります。それには「反証する情報」を取り入れることです。ニュースで流れる多くの情報はスピード重視のため,不確実なことも多く含まれます。ニュースやSNSで流された情報をうのみにして「魔女狩り(ターゲットにして攻撃すること)」が行われているのが,今の「ネットいじめ」の正体です。発信された情報についてうのみにせず,真実を知るためにも「事実」の部分はどこなのか,そうではない側面はその人にはないのかなど,「反証する情報」を取り入れていくことで,いじめの加害者に加担することが避けられます。

しかしながら,聴覚的に聞いただけの情報は次第に忘れていきますが,ツイッターやインスタグラム,フェイスブックなどの視覚的情報は,たとえ削除したとしてもどこかに保存されているなど半永久的に消えることはないといいます。「デジタルタトゥー」と呼ばれていますね。SNSでもっぱら書き込みをしている人の心の働きは,「人の不幸は蜜の味」ということわざと関係していそうですね。「心の防衛機制」からくるのでしょうけれど…。

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それではまた。

中里文子


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