【コラム】死にたいほどつらい気持ちを受容する

(代表中里文子のコラム/2024.1.22)

日常生活の中で、時には落ち込み心がへこんでしまうことも少なくありませんが、そのほとんどは自らが持つ「自己治癒力」によって時間とともに徐々に元の状態へと戻していくことができています。

しかし、心の状態がなかなか元へ戻らず不安定なままになっていたり、ネガティブな状態が慢性化したりすると、気分はさらに閉ざされたままになり「もういっそ死んでしまいたい」「もし死ねたら楽になるのかな」という気持ちが沸き起こってしまうことがあります。このぼんやりとした「死にたい」と願う感情は、「希死念慮(きしねんりょ)」と呼ばれる症状で、生きることからの逃避・自己否定であると考えられています。

このような気持ちが沸き起こることはいつでも誰にでもありうることで、その人の心が「弱いから」というものではありません。こういった心の落ち込みや希死念慮が現れる主な要因として、以下の3つが挙げられます。

【個人的要因】
うつ病、双極性障害、統合失調症、依存症などの精神疾患によるもの(脳の「幸福感」を感じる神経伝達物質セロトニンの活動が低下することなどから、自責の念、自己否定、自罰感などにとらわれ、希死念慮につながります)

【家族的要因】
家庭内不和、コミュニケーション不全、DV、虐待などによるもの(誰からも愛されていない、信頼されていないなどと考え、究極な孤独感を感じます)

【社会的要因】
所属感、社会的存在価値などが感じられず、「存在すること自体が迷惑をかけている」「自分は不要な存在だ」と考え、社会的孤立や疎外感に苛まれます)

もし自分の周りの仲間や親しい人がこういった気持を抱えているようであれば、まずはその深い孤独感を一人で抱え込まないように、その気持ちがあることを理解してあげます。

「死んではダメ!」と否定したり、叱咤激励やアドバイスをしたりすることは禁じ手になります。ただひたすら「聴くこと」に徹し、気持ちを受容します。「受容」は簡単なようで難しい技法です。なぜなら、相手がたとえどんな言葉を発したとしても否定せず意見せずにただ受け止める(肯定することではないです)のです。「死にたいほどつらいんだね」「そうか、ずっと苦しい気持ちを抱えていたんだね」のようにただ受け止めます。「分かってもらえた」という感覚が相手の苦しみを緩めていきます。

また、「アイメッセージ」は有用な技法です。アイメッセージの「アイ」は「I、私」という意味です。具体的には、「(私は)あなたの気持ちを聴きたいと思っているよ」「(私は)あなたのことをとても心配しているよ」「(私は)あなたが死んでしまったらとても悲しい」という声かけをして、相手に寄り添う気持ちを示します。

希死念慮」が現れているということは、とても症状が重症化しているということです。できるだけ早く専門家につなげることが重要になります。

① 薬物療法(病気の症状であれば、精神科・心療内科に繋げます)
うつ病等精神疾患であれば、SSIRなどの抗精神病薬による治療になります。

② 心理(精神)療法(臨床心理士等の心理専門家による治療的カウンセリングに繋げます)
以下の観点を踏まえ、カウンセラーは「死ぬしかない」という強い気持ちを緩めて(修正して)いきます。
・「死ぬしかない」という考えは、「視野狭窄」に陥っている状況であり、それ以外の選択肢が見えなくなっているのです。
・「死にたい」という気持ちと同時に、「生きたい」という気持ちも残っており、振り子のように大きく揺れている状況があるはずです。しかしながら、その揺れ幅が大きい場合は注意が必要であり、医療につなげて薬物療法での治療を優先します。
・心の中がネガティブな感情でいっぱいであるときは、「焦燥感」に注意します。行動特徴として見られます。例:そわそわして落ち着きがない、イライラしている、動き回る。

「死にたい」という言葉を軽くとらえず、「死にたいほど辛い気持ちなんだ」と置き換えて理解してください。そして、出来れば専門家の存在があることを知らせてください。

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それではまた。

中里文子


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